続かないの始まりコンビニアルバイト
初めて人に雇われたのは友人の誘いで入ったコンビニのアルバイトだった。
家から最も近く、一番利用していたコンビニであった。
友人はそこにオープニングスタッフとして勤務していた。
私はアルバイトをまだした事が無く、楽しそうに働く友人の姿を見ていいなあと思っていた。
私のこの頃の労働に対する意識はすこぶる低く、特にコンビニのアルバイトは楽だ、というイメージを持っていた。
この時は楽に楽しく働けるぞ、と意気揚々だった。地獄を見る事になるとはつゆしらず…。
オーナーは色黒、体育会系でガタイの良いゴリラみたいな奴だった。声がとにかくでかい。
まず入ってさせられたのは入り口付近に突っ立ち、ひたすら「いらっしゃいませ!!」と叫ばされる事だった。
かなり困惑した。こんな所に立ってひたすらいらっしゃいませを言い続けるアルバイトなど見た事なかった。
客も何だか不審な目で見ている気がしてたいそう恥ずかしかった。
普段コンビニを利用していて全く気にならない店員の「いらっしゃいませ」の挨拶。
言う側はけっこう声を出さなければいけない。この時点で辞めたくなった。
ゴリラが「よしいいぞ」と言うまでさせられた。
次に教えられたのがフェイスアップと言うものだった。
全ての商品を表に向ける事である。
売れたあとにも商品が棚にスカスカ状態に見せない様に前に出したりもする。
その後レジの使い方や発注の仕方など色々と教えられた。
昼時の客が多い日だった。
とにかくレジが混んでいてひたすら会計をしフェイスアップどころでは無かった。
ひと段落してすぐオーナーがあらわれ、「おいゴルァ!!!フェイスアップができてない!!」とバックヤードに呼び出された。
何とも絶妙に悪いタイミングで現れるゴリラだった。
レジで精一杯でフェイスアップどころじゃ無かったんです!という口答えも出来ず、店の三カ条みたいなのを何回も大声で言わされた。
10代の女にする事かよ…と思いつつも罵声を浴びせてくるオーナーに涙した。
タイミングの悪い事は更に続く。
おせち、ケーキ、お歳暮の時期だったのだ。
バックヤードには予約を取ってきた数を張り出される。
日本一売れてるおせちが、何故日本一売れているかの理由を知ってしまった。
アルバイトが圧力により買わされているのだった。
私にはおせちを買ってくれるような友人や親戚は居ない。
私を誘った友人にどうするのかと聞くと「親戚が亡くなったので祝いものは無理で…」と押し通すそうだった。
その手は使えないか…と落胆したが、ゴリラオーナーは毎回「予約何個取った?」と圧をかけてくるのであった。
女子高生のバイトの子が10予約を取っているせいで私達の風当たりはかなり強かった。
私は渋々お歳暮だけ親戚に贈り、一つだけ数字を上げた。
そんな事が続き私はアルバイトを数週間で辞めた。
家から最寄りという事もあって外出する時は見かけるたび爆破してやりたいと思う。あの茶色いダッサイユニフォームを見るたび吐き気がし、同じ系列店もしばらく入れなかった。
仕事の続かない人生のスタートはこのような感じだった。
コンビニはどこもこんな感じなのだろうか?
最低賃金でもやる事覚える事が多く、割に合わない仕事だと思う。
今では私はすっかりファミマ推しの人間になった。そしてコンビニ店員に愛想よくしている。
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